What could be Known

目を閉じれば 瞼に光りが届く 明日の世界から

Testament to Japanese      日本人への福音 1

 

プロローグ

 

 現在の日本人は、如何なる文明の中に存在しているのか。日本文明の中に存在しているといえば、そのことを納得しうるファクターは幾らでもある。近代文明の中に存在しているといえば、そのことを納得しうるファクターは幾らでもある。然しその問いに、専らその本質の外殻を何度も周回せざるを得ないならば、それは文明の変遷という文明の中に存在していると答えることが、最も日本人の原点の探索に恩恵をもたらすであろう。この現在の日本人とは、19世紀後半から1世紀半、ユーラシア大陸最東の島嶼国が、僅か三四半世紀にして、近代西洋帝国に伍する迄に、産業と軍事と統治のシステムを作り、そして近年白日の下に晒さている国際政治の謀略に翻弄され、アメリカ帝国との総力を挙げた戦いに敗北し、以後三四半世紀そのアメリカの属国の中にいる日本人である。またアメリカ帝国に対する新たな挑戦者である現代のチャイナ王朝にも、脅迫と恫喝を受け、顔色を窺う、チャイナの属国の日本人である。21世紀前半、現代の日本人が中世・近代に発揚した民族の気概を取り戻すには、如何すれば良いのか。其の為には日本人は世界の歴史から学び直さねばならない。何をか。世界の歴史から、日本人への福音、則ち使命を知ることである。

 それでは使命を知る歴史の探索に出よう。 

 

光と闇の世界

 

 創造論の想像力は世界の誕生をこう語ってきた。世界は闇であった。世界は空間も無く、時間も無くただ闇であった。ある時、光あれと宣われ、瞬く巨大な光が現れ、世界は光と闇に分けられ、その光は無限に広がり、時間と空間が生まれ、闇には水が充溢し、光を昼と名付け、闇を夜と名付けられた。それは第1日目であった。次の日、光と闇の世界にて、闇の水を分かち、その間に大空が創られ、それを天と名付けられた。次の日、水が集められ、乾いた地が現れ、その地を陸と名付けられ、水の集まりを海と名付けられ、陸には青草と果樹の植物が現れ、覆い茂った。次の日、天には太陽と月と無数の星々が現れ、耀き、地を照らす光となった。次の日、海には水に群がる生き物が現れ、そして天の大空を飛ぶ鳥が現れた。次の日、地には獣と家畜等、地を這う総ての無数の生き物が現れ、息を始めた。そして最後に人の男と女が現れ、天と地の万象が完成した。そして人に宣われた、すべてを治めよ、地を従わせよと。これら総ては、第7日目に安息された唯一の創造主の所作である。聖書の創世記には、世界の始まりの物語はこのよう語られている。

 

 ヘブライ民族が口承し、また書き記した聖書は、現在も世界人類の三分の二を信者に併せて持つユダヤ教キリスト教イスラム教の聖典であるが、この同じ唯一の神を戴く一神教以外に、多神教を戴く世界人類の三分の一にとっても、この聖書は、預言者によって神の言葉が体系的に叙述された、ヘブライ民族と世界の歴史の書、またヘブライ民族と唯一神の協約の書として、BC15世紀から継続して記され、BC6世紀後半からBC5世紀前半にかけて編纂された世界最古の書物である。そしてAD1世紀後半からAD2世紀前半にかけて新約聖書の編纂とキリスト教の勃興と拡大、またAD7世紀前半から後半にかけてクルアーンの編纂とイスラム教の勃興と拡大によって、双方が聖典として位置付けるこの聖書は、今もヘブライ民族を超えて世界の諸民族にとって、人類共有の精神遺産である。近代科学はこの聖書を、オリエント神話、ギリシャローマ神話北欧神話、日本神話など、世界の神話の一つとして学術の対象とし、歴史学、哲学、宗教学、言語学、人類学、地理学等が、考古学的事実の検証と共に、神の理念の深奥を解析してきたが、未だに考古学的に歴史事実は実証されていない。ここにはヘブライ民族による歴史の綜合、文明の綜合があるかもしれない。然し聖書の解析は、新約聖書キリスト教クルアーンイスラム教、まして聖書そのもの原始ユダヤ教を否定するものではない。唯一の創造主の理念と、其々の経典にある人間存在と絶対者との関係の教理は、教団と宗派を、また一神教多神教を超えて、様々な人類の他の思念と共に永遠のものである。

 

 現代科学が解き明かす138.2億年前の世界は、時間と空間のない「無」の世界があった。然しそこには素粒子が生まれては消え、生まれては消え、世界は現れず、常に0(ゼロ)の状態であった。これが唯一の創造主である「無」の世界である。突然歪みが生じ、0(ゼロ)が膨張を開始し、光が生まれ、そして重力と熱エネルギーが生まれた。これが現代物理学の相対性理論量子力学が想像するビッグバンによる宇宙の誕生・世界の誕生である。創造論では、この唯一の創造主である「無」の世界が、唯一の創造主である「神」であり、ビッグバンは突然ではなく「神」の意志によるものとなる。これから文明の歴史を綴るならば、原点に返る必要がある時は、取りも直さず光と闇の世界に戻ろう。

 

Sincerely